ソーラーラジコンカーコンテストを考える!

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 近年の環境問題を意識した競技の中に太陽電池(光電池)を扱ったソーラーカーレースがあります。各地で車に限らずボート、自転車などの人の移動に係わる物を対象に行なわれています。その中でもソーラーカーは開催場所や台数が多いので有名です。しかし、人が実際に乗れるソーラーカーは製作費や場所などの関係で誰でもが簡単に挑戦できません。そこで、ソーラーに力をいれている石川県が費用や場所に恵まれない工業高校生にも自分の手で作れるソーラーカーということで模型のソーラーカー競技を考案し、これからの技術者として環境問題や物に対する意識を育てるために1994年から毎年開催しています。
 そんな中で、いままで参加経験からコンテストの内容やノウハウなどをふりかえりながらまとめてみたいと思います。
1.はじめに
 太陽電池への思いは、今から22年前に東京の秋葉原で太陽電池を購入したことから始まりました。本物のソーラーカーがしたいと思い高額なソーラーパネルを買って思案をしていたら、ソーラーカー用のパネルまで売り出され、馬鹿らしくなって太陽光発電に切り替えて色々と研究していました。岡山県の工業高校でもソーラーカーが製作され始め「いいなー」と思っていたら、石川県主催のグランドソーラーチャレンジの継続イベントとして、全国の工業高校生を対象にソーラーラジコンカーコンテストが開催されることになり飛びついて今回まで連続で出場している次第です。
2.競技の内容
  1. 主催者の指定(第7回よりエントリー代金20000円にパネル4枚とコンデンサ4個が含まれる)の太陽電池パネルを4枚まで使用してもよい。
    1枚のパネルは108mm×200mm 厚さ2mm 重さ50gで出力は約2W
    解放電圧は2.8V(タミヤ製@7500円)
  2. モーターの起動や登坂用に指定のコンデンサ4個が使用できる。
    スーパーキャパシタ(ナショナルGOLD CUP 2.5V 4.7F@300円)
  3. 27Mhz(AMナロー)の送信機(以下プロポ)で無線操縦(以下ラジコン)で
    操作できること。
  4. 車両の最大寸法が全長1000mm、全幅500mm以内
  5. 車検時に内部を確認でき、プロポにあわせて受信機のクリスタル
    (水晶発信器)が容易に交換できること。
  6. もちろんですが生徒の自作のものであること。
  7. 競技コースは毎回変更されますが、一周が約100〜150m(第6回から専用RCコースになり第7回は240m)
    で途中に勾配10°の坂がある。(第5回までで専用コースでは坂は無い)

過去の優勝高校
1,2回紀北、3回大聖寺実業、5,6回和歌山工業、7回洛陽工業

3.一般的な競技車両の特徴
  1. 軽くて重心が低い。
  2. 走行抵抗を考えて細いタイヤで前輪2輪で後輪は1輪の3輪車が多い。
    第5,6回は1輪の前輪駆動が圧勝したが今年の7回大会では
    後輪駆動車のような気がする
  3. パネルは最大の4枚
 スピードコントロールは操作性を考えて無段階変速(電子回路によるPWMコントロール)効率が落ちるためほとんどのチームはスイッチによる電圧切り替えで行っている。
 電池パネルは特別にサンダーを製作して50gから26gまで裏のベークライトを削っている。(測定をしなければハッキリ言えないが振動のなどで出力低下が顕著になるかも)
第1回、2回の優勝チームは25gまで削っていた。


4.考慮すべき事項
  1. 1位から4位までの入賞以外にデザイン、設計企画、製作技術、審査員特別賞
    などの各賞があるが1回戦を勝ち抜かないと選考対象にならない。
    (今までの表彰データからで公表はしていない)
  2. モーターの選択が勝敗を左右する。限られたエネルギーで走行するため
    効率がよく、軽量なモーターが必要。天候が悪ければ極端に差がでる。

  3. プロポを操作する生徒の能力が勝敗を左右する。いくら性能のよいマシンを
    製作しても完走しなければリタイヤになる。スピードが速くなるとさらに
    操作は重要になる。

  4. カーブでの安定性、ブレーキ性能がラップタイムに大きく関係する。
    第3回大会ではメカニカルブレーキ装着車が優勝した。

  5. タイヤもスケールダウンして考えるとかなり固めのものになり、アスファルト
    で整備された路面も砂利道のようなものと考えられる。ラジコン用のスポンジ
    タイヤではころがり抵抗が大きすぎる。ころがり抵抗を下げる方が重量軽減より優先されるべき。

  6. 晴天時ばかりではなく石川地方の天気は日本海側の島根や鳥取の天候に近く、
    夏でも晴天は少なく雲が多い。地元での練習やセッティングは天候を十分に
    考慮しなければいけない。(岡山のような晴天日は少ない)

  7. 太陽電池の温度特性図からパネルの表面温度が1度高くなると最大出力が
    0.5%下がる。また、最適な電圧で使わないと効率が下がりエネルギーが取り
    出せない(電流、電圧ー電力特性図)。本物のソーラーカーではMPPT
    (最大出力動作点追従装置)が搭載されて効率良くバッテリーに
    充電している。
    素子温度特性
    電流、電圧ー電力特性

  8. 10gが問題となるこのレースでは軽量化した電子回路が工夫できれば
    勝因となる。(天候が悪ければ特に効果がある)


5.今までのレースを振り返って

 第1回はエントリー台数も60台前後で岡山県も3校で4台が出場。雨を避けての天候に恵まれないレースでしたが、敗者復活戦もあり初回としては納得のいく運営でした。試合の方は、プロポ操者の技量不足でコーナーでコンクリートブロックに激突あえなくリタイヤ。始めての運用ということもあって一度のトラブルでコースから外される羽目になりました。第2回からは動作する、しないにかかわらずコースには戻してくれるようになりました。このときにドライバの訓練が勝敗を大きく左右することを痛感させられました。この試合では高性能、高効率のモーターで出場していたチームは優勝チームと本校の他に2チーム程度した。曇天時などの太陽エネルギーの少ない条件では他のチームが「他に電池を使っているといるのでは・・・」とクレームを言われるほど差が出ました。
 第2回は天候に恵まれスピード感溢れるF1レースを感じさせるスリリングなレースが展開され、どのマシンも性能を十分にだしきってのレースとなり、ドライバーに恵まれたこともあって最高スピードで上位2台に負けていましたが操作ミス1回で2位に浮上して準優勝することができました。
 第3回では曇天の対策をミスして上位に残れず最高スピードを目指して対策した努力は報われませんでした。連続優勝のチームもラジコン用電池の入れ間違い、コース上の砂がギアに挟まるなどでリタイヤするなど波乱の多い試合になりました。 
必要なときに適切なアドバイスだけで生徒は自分の能力を伸ばせているように思う。手を出しすぎても、放任しすぎても生徒の達成感や成長が期待できない。
 今年参加した3年生は、1年生の時に見学させ2年で準優勝、今年は準決勝に進めなかったものの自分たちで電子回路設計をして工夫を凝らし、最高スピードも目標の30kmを達成している。天候対策では私の改造案とも対立したものの私を納得させる説明と意見で対等に話ができたことは非常に楽しく、生徒の成長に感動を覚えた。
 第4回は1回戦は坂道がありましたが、2回戦から坂道なしのコースだったと記憶しています。1回戦は2台ともトップで通過しましたが、2回戦で1台はパネル接続ミスで途中で止まり、もう1台もスピードに操作が追い付かずコースアウトの連続で3回戦に進出できませんでした。ドライバーが上位入賞には不可欠ということと電気的な部分を生徒自身がよく理解しておく必要が有るとおもいます。
 第5回は出場校のレベルが上がり、練習走行をみて上位入賞がないと判断しました。それだけ速くて安定した車が多かったのです。そんな中、1台は昨年同様のパネル接続ミスでまさかの1回戦敗退、もう1台は何とか3回戦まで残って、幸にもデザイン賞をもらうことができたのは幸運でした。それと、県内での練習会のおかげか岡山県からの津山工、水島工、新見北、商大付と本校と全て2回戦に駒を進めれたことはよかった。来年は岡山県勢が3回戦に駒を進められるよう頑張りたい。車では前輪駆動の前輪操舵が優勝し、台数も5台ぐらいあったがいずれも上位に食い込んでいた。時間の関係でタイムトライアルが30台程度で行われた。
坂道の勾配がいつもより緩やかでラップタイムが25秒代(優勝車)
今回のデザイン賞をもらった車
重量は460gと軽く、低重心だったが前輪のタイヤが小さく、ギアヘッドを使った変速のため転がり抵抗が大きかった、パネルを山形にしたのは太陽の光りを十分に取り入れる点で失敗、受光面が同位置でないためにパネルを直列に繋いだ時には光りの当たりにくいパネルが全体の抵抗に成ってしまった。
変速がタイヤ交換でしかできない上に取り付け、取り外しが面倒であったし、タイヤも準備しなかった。天候によるベスト設定ができていない。
 第6回は山の中の専用コースに変わった。担当の生徒は学校に出てこない状況で省エネカーの担当者にピンチヒッターを頼んでなんとか参加。それでもなんとか3回戦まで残れた。岡山商大付属、津山工業、水島工業、新見北、本校
 第7回も専用コース、エントリーをするつもりは無かったが生徒の希望で参加することに。岡山理科大付属、新見北、本校とエントリー車の全てが3回戦に残ったがここまでだった。


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